いのたまメンタルヘルス会議室/運営日誌
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[言いたいことを言う資格](2011/04/29(Fri.) 16:27)
統合失調症で30年近く入院していた女性が亡くなった。まだ50代だった。ずっと独身だったので、家族はきょうだいと甥姪だけ。甥御さんの一人が、死因は「薬が多すぎたせいではないか」と言い出した。

私は死因を訊ねた。答は「わからない」だった。年齢から、ガン、くも膜下出血か何かの脳血管の病気、心臓の病気など考えられる。どうだったのかと訊ねたが、「わからない」の一点張りだった。

「親御さんは死因をご存知だと思うけど?」
「いや、きいていない」
「医療過誤で法的アクションを起こす?」
「いや、そうじゃなくて」

死因がわからない以上、話を続けても意味がない。それでも「薬が多すぎたのではないか」と言う。

「叔母様の処方は?」
「知らない」
「お見舞に行ったことは?」
「ない」

見舞に行かなかった背景は理解できなくない。亡くなったのは母親の妹に当たる。見舞に行けば、自分の母親が保護者に選出される可能性があった。それを避けるためなら、母親を優先しただけのこと。責める気はない。

だが、何度も「薬が多すぎたのではないか」と聞くうち、苛立ってきた。私が服薬中だと知っていながら、うるさい。死因を知らず、見舞にすら行かなかった人間に何の権限があるのか? 

苛立ちながら、死因を知らない背景を考えた。病気や事故なら、家族が告げる。だとしたら、自殺か。

私は言わなかった。気づかない人は知らないほうがいいと判断した。同時に「生前、一度も見舞に行かなかったことを悔やんでいる」の一言もないまま、薬が云々と酒の肴のように続く話が不愉快でたまらなかった。

「死因がわからない以上、どうにもならない。私から言えることは一つだけ。行動を伴わない人間に言いたいことを言う資格はない」


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